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<首・頸椎について>
頚椎症と頚椎症性頚髄症の鑑別
はじめに
頚椎症には主な四つの症状があります。
1、局所の症状
2、自律神経の症状
3、神経根の症状
4、脊髄の症状
があると前回の首と頚椎の症状の注意点で述べました。
動的なストレスによる首、肩などの局所症状から頸髄の中枢の障害まで混在しております。
それゆえ、首や肩や上肢の痛みや違和感などの症状が、
末梢性の障害の症状なのか?、中枢性の障害の症状なのか?の鑑別は重要です。
すなわち、
頚椎症と頚部脊椎症性神経根脊髄症あるいは脊椎症性脊髄症の鑑別は重要です。
臨床的には、
★脊髄の中枢性の障害か?
★脊椎の神経根を含んだ末梢性の障害か?
★単なる筋の障害か? それ以外の障害か?
以上の3点の鑑別が重要になります。
頚椎に限らず腰椎でも同じですので少し詳しく説明しておきます。
当然、お医者様は、MRIなどの画像診断と下記の検査などで鑑別します。
私達のような施術者は診断機器が使えませんので下記の理学的な検査のみを行います。
脊髄症などが疑わしい時などは当然、お医者様に紹介しMRIなどの画像診断や治療を
委ねなければなりません。
長くなりそうなので順次述べていきます。
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1、反射を観察する。
反射とは筋肉、腱への刺激によって引き起こされる不随意の興奮・運動のこと。
さまざまな反射があり特徴があります。
この反射を利用して鑑別します。
< 反射の種類>
○深部反射
上肢は二頭筋反射、三頭筋反射、下肢では膝蓋腱反射、アキレス腱反射
四肢の反射では、亢進と消失の両方が病的な状態になります。
判定は正常(+)と亢進(++、+++)、消失(−)を用います。
★反射の亢進は※反射弓より高位で皮質脊髄路(※錐体路)が障害されている
可能性を示唆しています。→中枢性の障害を疑う。
錐体路などの上位運動ニューロンは下位運動ニューロンに対して抑制をかけています。
したがって上位運動ニューロンの経路のどこかで障害されると、
その抑制が取れるため反射が亢進します
★反射の消失は反射弓が障害されていることを意味しています。
求心路の感覚神経(後根)、遠心路の運動神経(前根)、筋自体→末梢性の障害
★深部反射の、下顎反射は亢進だけが病的状態を示し、陰性は正常です。
下顎反射の亢進は皮質橋路の両側性の障害を意味し、嚥下・言語障害をともなえば、
仮性球麻痺と診断します。
★筋自体の障害であると腱反射は、最初は正常の状況から筋萎縮が高度になれば、
消失に移ります。
○表在反射
臨床上重要なのは腹壁反射です。
腹壁反射は消失のみが病的です。
したがって(+)か(−)で判定し亢進の判定はない。
腹壁反射の消失は反射弓障害でも錐体路障害でも起こります。
○病的反射
バビンスキー反射・チャドック反射・ホフマン反射などがあります。
※錐体路の障害で特異的に出現する反射ですので病的反射と呼ばれます。
そのため、病的反射が存在すれば錐体路障害が存在します。→中枢性の障害。
重要なのは、
腱反射の亢進がなくても病的反射が陽性であれば錐体路障害が存在している。
判定は陽性(+または↑)、陰性(−または↓)でおこなう。
<病的反射と腱反射>
○末鞘神経系の障害では反射弓が傷害されますので早期に腱反射が消失されます。
○中枢神経障害では、上位ニューロンが障害されますので、下位ニューロンに対する抑制が
解除されますので、反射が亢進します。
更に特異的な病的反射が出現します。
※反射弓とは?
反射とは筋肉、腱への刺激によって引き起こされる不随意の興奮・運動のこと。
刺激の入力系(感覚系)と筋への出力系(運動系)の経路をあわせて反射弓といいます。
刺激が腱に入る→感覚系の求心性神経→│椎間孔│→後根→脊髄→
→脊髄の前角細胞→前根→|椎間孔|→遠心性の運動神経→筋肉→反射
※錐体路とは?
錐体路とは随意運動を司る伝道路のこと。
錐体路とは皮質脊髄路と同義であり、皮質脊髄路が延髄の錐体を通っているために
慣用的に使用されています。
皮質延髄路や錐体路などは上位運動ニューロンになります。
運動性脳神経核や脊髄前核細胞から四肢の筋までは下位運動ニューロンです。
錐体路の伝道路(延髄の下で錐体交叉されます。)
大脳皮質→→錐体路→→脊髄前角細胞を経て→→→
頚部から下の筋肉を支配する下位運動ニューロン
皮質延髄路などの伝道路(運動性脳神経核で交叉します。)
大脳皮質→皮質中脳路・皮質延髄路→→運動性脳神経核を経て→→
頚部から上の筋肉を支配する下位運動ニューロン
上位ニューロンである皮質延髄路や錐体路が障害されると、頚部から上の筋肉を支配する
下位運動ニューロンの抑制が解除され、反射が亢進し、更に病的反射が出現します。
以上を簡単にまとめると、
★腱反射の亢進は、錐体路を含む上位運動ニュ−ロンの障害の中枢性障害を示唆する。
★腱反射の消失は、反射弓障害の末梢神経障害。
★病的反射の陽性は、錐体路を含む上位運動ニュ−ロンの障害の中枢性障害。
★腹壁反射の消失は、反射弓障害でも錐体路障害でも起こります。
★筋肉の障害では腱反射は最初は正常ですが筋萎縮が高度になれば消失します。
次に、臨床で重要な反射の正常所見(反射弓の中枢)を述べておきます。
○下顎反射(+)・・・・・・・橋
○上腕二頭筋反(+)・・・・・・・・第5・6頸髄
○上腕三頭筋反射(+)・・・・・・第7・8頸髄
○腹壁反射上(+)・・・・・・上(第6,7,8胸髄)、中(第9・10胸髄)、下(第11・12胸髄)
○膝蓋腱反射(+)・・・・・・・・・・第3・4腰髄
○アキレス腱反射(+)・・・・・第1仙髄
○バビンスキー反射(−または↓)・チャドック反射(−または↓)
ホフマン反射(−または↓)
病的反射が陽性であり、錐体路が障害されていれば、
次に、
ワルテンベルグ反射、膝、足関節にクローヌスが出現しやすくなるので必ず調べる。
いすれも錐体路障害で脊髄反射が異常に亢進して起こる症候です。
判定は陽性か陰性かのどちらかで判定します。
以上の反射は臨床では必ず調べます。
そして重要なのは、
決して、ひとつだけたとえば、膝蓋腱反射が亢進しているので錐体路の障害などと、
判断しないように。
総合的な反射所見を理解し、できるだけ病変部を絞り込むように考えます。
どのレベルの障害かを考えるようにします。
<反射を観察するのまとめ>
みなさんが注意するべき、
中枢神経障害か末梢神経障害かの判断は、
病的反射が陽性かどうかがを知るだけでも良いかもしれませんね。
具体的な反射の方法は、また別の機会で紹介することもあるかと思いますので、
今回は省略させていただきます。
その他の重要な鑑別は次回に
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2、筋を観察する
中枢性障害か末梢性障害か筋の障害かの診察、診断には本来ならば、
○筋トーヌス(筋緊張) ○筋萎縮 ○筋線維束攣縮を観察するのですが、
この項目である、脊椎症か脊椎性脊髄症かの鑑別という目的であれば、
筋トーヌス(筋緊張)のみで充分かもしれません。
「筋を観察する」ということで、一応お伝えしておきます。
○筋トーヌス(筋緊張)
末鞘障害では反射弓が障害されていますので、筋トーヌスは低下します。(弛緩性麻痺)
中枢の錐体路障害では亢進します。(痙性麻痺ただし急性期は時に弛緩性麻痺)
筋肉自体の障害では正常から弛緩性麻痺
弛緩性の麻痺で重要になるのが筋力になります。
末梢性の神経根に圧迫が加わった場合にはその程度に応じて筋力の低下が起こります。
したがって、弛緩性麻痺を認めた場合は、筋力検査が必要になります。
<徒手筋力テスト(MMT)>
5:強い抵抗を加えても完全に関節を動かすことができる。
4:ある程度強い抵抗を加えても完全に関節を動かすことができる。
3:重力に抵抗して完全に関節を動かすことができるが、
それ以上の抵抗を加えると関節を動かすことができない。
2:重力を除けば、完全に関節を動かすことができる。
1:筋肉の収縮は認められるが、関節は動かない。
0:筋肉の収縮も認められない。
各段階の中間と思われる場合は5−と表示することがあります。
調べる筋肉により抵抗を加える部位は決まっています。
評価5が正常だと思ってください。よく誤解されます。
評価5が普通の人の正常な筋力です。それ以下は筋力が低下している状態です。
評価3は、何とか関節を動かせる状態です。非常に悪い状態です。
いくら大病院で末梢性の弛緩性麻痺だと診断されていても、
私どものような治療院の治療と指導では4−程度が限界かも知れません。
もし、評価3であれば、たとえ単なる筋障害だと思っても必ず病院に行きましょう。
神経内科と整形外科の両科がある病院が良いでしょう。
その他の脊髄症を積極的に疑う特徴的な反応
○緻巧性の低下:手指の動きが悪い。シャツのボタンなどがかけずらい。
○小指離れ徴候:指を閉じると小指が離れて付かない現象が見られる時があります。
ひどくなると環指・中指も離れます。
○手指の素早い握り開きができない。10秒間に20回以下(正常は25〜30回)
○「1、2の3」で両手をパッ開ける時、手指の開け方がスムーズでなくダラダラと開く。
○その他、
以下は参考にしてください。
バレー徴候(上肢、下肢):は中枢性の原因かどうか、
軽い筋力低下に対するスクーリニングで必要です。
肘関節の筋トーヌスの診断には、錐体路障害、錐体外路障害などの推定する検査です。
筋トーヌス亢進には固縮、痙攣縮があります。
固縮→鉛管現象、歯車現象があり錐体外路障害
痙攣縮→折たたみナイフ現象があり錐体路障害
筋トーヌス低下は弛緩の状態
下位運動ニューロン障害、小脳失調、筋神経筋接合部の障害
○筋萎縮
神経原性(下位運動ニューロン)か筋原性(ミオパシー)か
視診により筋萎縮を観察します。わかりずらい場合は触診や計測をおこなう。
前回説明したように、
上位ニューロンは下位ニューロンに対して反射や運動が過剰にならないように抑制しています。
そのため上位運動ニューロンのみの障害では筋萎縮はおこりにくい。
ただし、廃用性の萎縮はあります。
下位運動ニューロンが障害されると、筋への直接刺激がなくなるため筋は萎縮します。
特に遠位の筋を中心として萎縮します。→多発性神経炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋自体の障害があれば当然、萎縮します。
特に近位の筋を中心として萎縮します。→多発性筋炎、筋ジストロフィー
まとめますと、
下位運動ニューロン(脊髄全角細胞および運動神経)や筋肉自体が障害されると筋は萎縮します。
一方、中枢神経系の上位ニューロン(大脳運動野から脊髄全角細胞にいたる錐体路)の障害では
運動麻痺は起こりますが、直接筋肉を支配していませんので筋萎縮は起こりにくい。
<結論>
中枢性神経障害には筋萎縮は無い。
末鞘神経神経障害には筋萎縮はある。
筋肉障害には筋萎縮はある。
○筋線維束攣縮
筋肉が線維束単位で無秩序に収縮するもので、筋肉が小さくピクピクと動く程度なので
注意して観測する。
脊髄前角細胞の障害があれば、筋線維束収縮がおこリます。
<結論>
中枢性神経障害には筋線維束攣縮は無い。
末鞘神性経障害には筋線維束攣縮はある。
筋障害には筋線維束攣縮は無い。
<筋の観察のまとめ>
みなさんが注意するのは、筋の緊張の麻痺と筋力の低下に注意してください。
当然、錐体路が障害されると手指の運動緻巧性の低下によってボタンをかける動作などの
緻密な動作もできづらくなります。
この症状は、意外と本人は気づかないで進行している場合があります。
頚椎症から頚椎性頸髄症については以上の点に注意し、
進行例などでは、
両下肢の痙性→手も動きにくいが足も突っ張って歩きづらい。にも注意してください。
当然、膀胱直腸障害が出現すれば緊急の手術にもなるでしょう。
以上の点に注意していただければ良いでしょう。。
もう一つの重要な鑑別は次回に、
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感覚を観察する。
中枢性の障害か末梢性の障害かの鑑別するには、感覚の観察があります。
末梢性の障害か中枢性の障害の鑑別には、
表在感覚の温痛覚と触覚の検査だけでも十分かもしれませんね。
ただそれだけでは、脊椎症と脊髄症との鑑別はまだまだ理解しづらいです。
長くなり、理解が困難な点も多いかも知れませんが・・・・・・・・あえて、
今後のために、感覚を観察するために詳しくのべておきます。
診断に使われる感覚には主に以下の感覚があります。
○表在感覚・・・・皮膚や粘膜の感覚
温度覚:熱さ、冷たさを感じる。
痛覚:痛みを感じる。
触覚:物が軽く触れたと感じる。
臨床では温度覚は温水と冷水の交互の検査が必要なため煩雑である。
そのために、伝道経路がほぼ同じである痛覚を主に検査することになります。
臨床では、温痛覚といっています。
<評価>
痛覚、触覚とも同じ評価です。
左右の同じ部位に同時に痛み刺激をあたえる、あるいは触れる触覚)
普通に感じるか。
左右差があるか、ないか
上下肢での差があるか、ないか
同一肢の近位部と遠位部の差がでないか、出るか
注意する点は、筋力の障害や運動障害は客観的に評価できますが、
感覚障害はあくまで患者さんの主観であります。
患者さんの十分な協力が必要です。
正常 |
異常 |
左右差 なし |
左右差 あり |
感覚の消失 なし |
感覚の消失 あり |
低下(鈍麻) なし |
低下(鈍麻) あり |
過敏 なし |
過敏 あり |
○深部感覚・・・筋肉、関節、骨などから伝えられる感覚
振動覚:音叉の振動を感じる。
関節覚:自分の四肢がどのような位置にあるか、どういう方向に動いたのかわかる。
足の指(母趾)の動いた方向がわからない場合は、異常です。
末鞘神経→糖尿病などのポリニューロパチー
脊髄後索→多発性硬化症、亜急性連合性脊髄症など
位置覚:無意識のうちに筋や腱の長さを感知する。
小脳が平衡や歩行の制御を行うのを助ける。
(歩行観察、マン試験、ロンベリング検査など)
○複合感覚・・・・与えられた感覚情報が大脳皮質の感覚野にはいり、統合されることにより、
物の性質・形態などを認知する。
2点識別:皮膚に同時に加えられた2つの刺激を2点として識別できる。
身体の各部位で大きな違いがある。手指・顔の舌唇などは感度が高い。
立体認知:閉眼で物体を触らせると、その大きさや形がわかる。
<感覚の伝道経路>
神経根(後根)から入り次に脊髄に入ります
温痛覚は外側脊髄視床路を通り、ほぼ同じルートです。
振動覚・触覚は脊髄後索を通過します。
一部の触覚は前脊髄視床路を通過します。つまりほぼ温痛覚のルートを通ります。
そのために、触覚は臨床的には、、振動覚と温痛覚の二つの経路を合わせたものと
考えてよい
つまり、
触覚障害があれば、温痛覚と振動覚の感覚障害が認められます。・・・・・・・・・1
温痛覚障害があっても触覚が保たれている場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
振動障害があっても、触覚が保たれている場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3つのパターンが存在します。
そ して脊髄を上行していきます。
運動系は上位運動ニューロン(錐体路)の経路をとおり神経根(前根)となり
一本に合流して椎間孔からでます。そして神経叢をつくり末梢神経となり筋など
下位運動ニューロンは脊髄前角細胞から筋肉までの伝道経路です。
<まとめ>
○筋肉疾患であれば感覚が障害されることはありません。
○末鞘神経障害では運動神経と感覚神経が並走しているので、
通常は運動麻痺部に感覚障害(触覚・温痛覚・振動覚)が起こる。
○中枢神経障害では、感覚障害は多種多様です。
以上の、まとめで中枢神経の障害と末梢神経の障害は理解できますが、
これでは頚椎症と頸髄症との鑑別がわかりづらいですね。
そこで、次に
頚椎症は神経根症状を含む末梢性の疾患ですね。
脊髄症は中枢性障害です。
末鞘神経は解剖学的には神経根と狭義の末梢神経からなります。
各神経根は各脊髄神経節から出入りし椎間孔を通過し、数本の神経の束に枝分かれし、
その後別の脊髄神経由来の神経と合流し末梢神経(狭義)となります。
脊髄|→→神経根(前・後根)→→|椎間孔|→→神経叢→→末梢神経→→→筋
脊髄|←←1、神経根の障害→→|椎間孔|→→神経叢→→末梢神経→→筋
脊髄|→→→→→ 末鞘神経 →→→→→→→→→→→→→→→筋
脊髄|← 神経根(前根・後根)→ |椎間孔|→→2、狭義の末鞘神経→→→筋
脊髄の前角細胞|→→下位運動ニューロン→→→→→→→→→筋
したがって頚椎症などの神経根症状と狭義の末梢神経の症状を見てみましょう。
<1、神経根障害に出現する症状>
○感覚障害
デルマトームに一致にて痛みが放散します。
障害が限局して出現し、境界がはっきりと明確です。
痛覚が他の知覚よりも強く障害されます。
※デルマトーム:脊髄の神経節からでた神経根は感覚神経として一定の皮膚領域を
支配しています。
皮膚領域における感覚神経の分布をデルマトームといいます。
代表的なデルマトーム:親指はC6、 中指はC7 小指はC8 母趾はL5、足裏Sは1
乳はTh4 臍Thは10 肛門はS1
★神経根の後根が侵されるとデルマトームに一致した感覚障害が出現します。
★中枢性障害は、障害が比較的広範囲に出現し、境界があまり明確ではアリマセン。
○運動障害
支配筋の筋力低下・萎縮
障害部位に対応する腱反射の低下・消失
★運動障害の範囲と感覚障害の範囲は一致しない。
デルマトームに一致しない運動障害があります。
★神経根の障害はデルマトームに一致しない運動障害が出現します。
例、C6障害は親指の感覚障害ですが、手首の背屈力の低下をきたします。
L5障害は母趾の感覚障害ですが、足趾の背屈力の低下をきたします。
キーガン・タイプの神経根障害
神経根の圧迫の場合、前根のみが障害され筋力低下のみがおこって、知覚障害のない
場合があります。これをキーガンタイプの神経症状といわれています。
<2、狭義の末鞘神経の障害時に出現する症状>
○感覚障害
障害範囲は限局的で境界は比較的明瞭。
痛覚障害よりも触覚障害の範囲のほうが広い。
○運動障害
支配筋の筋力低下・萎縮
障害部位に対応する腱反射の低下・消失
★運動障害と感覚障害の範囲はほぼ一致します。
例)橈骨神経障害は、肘・手関節の伸展障害(下垂手)、上腕三頭筋反射の低下、
橈骨神経支配の皮膚領域の感覚障害が明瞭に存在。
どうでしょうか? 少し鑑別しやすくなりましたか?
その他の臨床的な神経根症状と脊髄症の症状の特徴として、
○筋肉障害は筋の圧痛が存在。
○末梢神経障害は神経根痛が存在。
○中枢神経障害では片麻痺が存在。
神経根痛とは?
スパーリング徴候:首を後方へ圧迫すると上肢に痛みが放散する。
ラセーグ徴候:下肢を伸展位で挙上すると下肢に痛みを放散する。
この痛みはビリッとした放散する根痛です。
筋肉の引っ張られる様な持続性の痛みではアリマセン。
その他の参考すべき感覚は、
手がシビレル。
中枢性障害のしびれは、上肢がしびれる。手、手指のみならず前腕までしびれる。
脊髄症での手のシビレの範囲は神経根の圧迫とは異なります。
C3−4で脊髄が圧迫されると全指尖がしびれる
C4−5では約50%の症例で1〜3指がしびれる。
C5−6では約50%の症例で3〜5指がしびれる。
C6−7では指のシビレはおこらない。
末梢性障害の神経根のしびれでは、支配領域がハッキリしています。
親指側ならC6、小指側ならC8の神経根障害を考えます。
※神経根の障害では解剖学的には全感覚が障害されるのですが、振動覚の検査の
音叉の振動が骨から正常部に伝わってしまいますので、片側のみの障害を検出する
のは無理があります。臨床では温痛覚と触覚の検出をします。
その他、
○サービカル ライン (一種のデルマトームによる痛覚試験です)
前胸部C4とTh2の境のところで感覚障害の境界線がひける。
安全ピンで胸部や背部の中央あたりから上方に向かって軽くこするように引いてくると、
痛みを急に強く感じる部位が、上胸部から肩、背中にかけて上から輪をかけたように
ラインがみられる。
皮膚髄節がC4からTh2に飛ぶためですが、最も頻度の高いC5、6神経根障害を
検出する極めて高い有効な方法であります。
この所見と他の症状とをよく調べて、神経根症状のみか脊髄症を呈していないかを、
よく観察してください。
少し鑑別しやすくなったでしょう。
頚椎症のように近位の神経根かあるいは遠位の末梢神経の障害かの鑑別も
必要だと思いますので、次回は、もう少し末鞘神経特有の症候をまとめてみます。
少し専門的になりすぎの感もありますが、頚椎症や腰椎症のでお困りの方は、非常に
多いと思い、心配されておられる方も多いと思いのであえて、述べています。
最後にこれだけは知って欲しい事はまとめてみます。
もう少しのご辛抱お願いします。。
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末梢神経障害の症候と末梢神経近位部の神経根症候
末鞘神経の障害の病因は、なにも外傷にかぎらず非常に多く存在します。
問題となるのが、
1、病巣が近位の神経根の障害か?→今問題にしている頚椎症など、
2、遠位の末梢神経の障害か?
3、単一、複数あるいは多数の末鞘神経が障害されているのか?
を考慮に入れます。
○神経根の障害はradiculopathy(根性)
○遠位の末梢神経はneuropathy
○両方が傷害されればradiculoneuropathy
と診断されています。
また、
単一の末梢神経障害は単神経炎mononeuropathy→絞扼性と外傷が多い
複数の末鞘神経障害は多発単神経炎multiple mononeuropathy→ギランバレー症候群など
左右対称に多くの末梢神経が障害されれば多発神経炎polyneuropathy→膠原病が多い
などと分類されています。
一般的な末梢神経特有の神経症候
○腱反射消失:反射弓の消失による。
○弛緩性の筋麻痺・反射弓の消失による。
○全感覚障害と筋萎縮の並存:感覚神経の障害のため温痛覚・振動覚などの
全感覚消失。
運動神経が傷害されると筋萎縮を生じる。
○手袋・靴下型の全感覚障害:四肢遠位部に全感覚障害があれば
多発神経炎polyneuropathyを疑う。
以上の症状があれば、まず末梢神経障害を考える。
その中でも、頚椎症の神経根症状のポイントは、
○末梢神経近位部の神経根障害は、特徴的な症候を呈します。
後根(感覚)が障害されると、
脊髄節性の全感覚障害と神経根痛と呼ばれる疼痛を生じます。
神経根障害と末梢感覚障害では感覚障害の分布が異なっています。
○神経根の皮膚感覚支配領域は髄節性支配とよばれます。
四肢の一部分に感覚障害がある場合の鑑別は、
★障害範囲がこの髄節性支配に一致すれば、神経根障害を考慮します。
★一致しなければ末梢神経神経障害を考える。
★神経根痛は自発痛のこともありますが、スパーリング検査、ラセーグ検査で、
ビリィと放散する神経根性の疼痛を誘発することができます。
○神経根の運動症候では、
脊髄前角細胞および前根の障害により萎縮筋に筋線維束痙攣と呼ばれるピクピク
する自発収縮がおきます。
★患者さんは、この自発収縮を自覚していますので、その有無を聞きだす。
以上の3点は、整理しておきましょう。
ついでに、知っておきましょう。
以下の症候を認めれば、末鞘神経障害は考えられない。
1、半身性の感覚障害。→中枢神経障害を考える。
2、髄節性の温痛覚だけの障害。→脊髄の病変を考える。
前回とあわせてお読みください。
末梢神経の障害は非常に多く存在します。(整形だけでなく内科、神経内科、脳神経など)
みなさんの参考になれば幸いです。
次回は、各種の首の障害の各論の前に、簡単に<脊椎症と脊髄症の鑑別>をまとめます。
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まとめ
頚部頚椎症による頚髄症を疑う所見
頚髄症をまず大きくにわける。
○上肢がしびれる
ただし、しびれは手、手指だけではなく前腕までしびれます。
○手足の動きが悪い。運動巧緻性の低下。
○手も動きにくいが足も突っ張って歩きづらくなってくる。
○直腸障害
この四つの型に分ければ理解しやすいでしょう。
そして、どんな状態でも反射は調べましょう。
★病的反射が陽性・・・・錐体路の障害→頸髄症を疑う
バビンスキー反射が陽性反応
チャドック反射が陽性反応
ホフマン反射が陽性反応(最近は病的反射ではないという見解もあります。)
★腱反射の亢進・・・錐体路を含む上位ニューロンの障害→頸髄症を疑う
上腕二頭筋反射C5が亢進
橈骨反射C6が亢進
上腕三頭筋反射が亢進
膝蓋腱反射が亢進
アキレス腱反射が亢進
以上の反射が陽性であれば、大きな病院にいきましょう。
次に、もう一度調べましょう。
★腱反射の低下・・・頚神経根の低下による反射弓の異常→頚椎症
上腕二頭筋反射C5が低下
橈骨反射C6が低下
上腕三頭筋反射(C7)が低下
様子をみながら慎重に保存療法を続けましょう。定期的な画像検査は必要ですよ。
★スパーリングテストを調べる。
頚部を側屈して徒手的に頭部を圧迫すると、神経根が圧迫される。(頚椎症性神経根症状)
と患側上肢や背部への異常感、放散痛が 生じる。
この際に、体幹や下肢への放散痛があれば、脊髄自体への圧迫の可能性がある。
頚椎症性脊髄症を疑いMRIなどの画像検査が必要です。
ここまでの、症状や検査で異常なければ、それほどの心配はありません。
その他の症状で頻繁に起こるのは、
○しびれ
半身の上肢・下肢ならば頸髄よりもより上位の障害を疑う。
四肢の末鞘のみの症状ならば、運動障害と感覚障害の位置から
障害部位が推定できる。
末鞘の病変ならば運動神経線維と感覚神経線維では運動神経のほうが
太いので、運動神経があればより重症と考える。
運動障害の筋力は必ず調べる・。
★徒手筋力テスト(MMT)を調べる。
MMT4以下は要注意です。
その時に両手の巧緻の低下と歩行状態を確かめる。
ボタンがうまくはめられない。箸が使えないなど
足がもつれれてつまづきやすいか。両足がつっぱって歩きにくいなど等
○痛み
<頚椎症の神経根の障害>
支配筋の筋力低下・萎縮
障害部位に対応する腱反射の低下、消失
デルマトームに一致して痛みが放散する。
痛覚が他の知覚より強く障害される。
運動障害と感覚障害の範囲が一致しない。
以上の所見があれば、神経根症状を疑い注意し観察しながら保存療法
<末梢神経の障害>
支配筋の筋力低下・萎縮
障害部位に対応する腱反射の低下、消失
以上の2点は、神経根の障害と同様ですが、
障害範囲は限局的で、境界は比較的明瞭です。
痛覚障害よりも触覚障害のほうが範囲が広い。
運動障害と感覚障害の範囲はほぼ一致します。
以上の所見であれば、末梢神経の障害です。
例えば、手根管症候群などによる正中神経の障害などは代表例です。
基本は保存療法になります。
この場合に内科的な末鞘神経障害との鑑別が必要になります。
前回お話した末梢神経障害の症候と末鞘神経神経近位部の神経根症候鑑別ですね。
その他の注意すべき点
頚椎の手術の既往が有る場合の衝突や転落は注意する。
糖尿病や甲状腺の機能低症、飲酒などは既往歴を尋ねておく
糖尿病性末梢神経障害のため、反射が出現しづらい。
長かったですね〜〜。理解しづらい箇所も多かったでしょうが、敢えてお知らせしました。
このHPは・・・・・・コレをすれば治る、当院で簡単に治るとはあまり書いていません。
同じ病名であっても、病態は人によって千差万別です。
無駄な情報か? どうでも良い情報かはみなさんの判断しだいです。
みなさんの指針の一つになることができれば幸いです。
さあ!! これでやっと首、頚部、肩に関連した疾患の各論に進みます。
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