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<股関節について>
変形性股関節症以外の疾患について
はじめに
変形性股関節症についてはくわしく述べたつもりです。
股関節について・・・・まず股関節の構造などの知っておくべき事実
変形性股関節症について・・・変形性股関節症について知って基本的事項
変形性股関節症を心配されている方に・・・・あなたの変形性股関節症はどういう状態か?
十分に観察することが重要です。
そして事実を知り、今後どのように対処すべきか?過去より未来を!!
変形性股関節症の治療について・・・・変形性股関節症の基本的治療法の目的
変形性股関節症の保存的療法について・・・保存療法の目的や注意点など
今回からこの項目においては、
変形性股関節症の類似疾患から、
症状は似ているが、全く別の疾患
類似疾患で変形性股関節症の基礎疾患になる疾病
以上を簡単に述べて行こうと思います。
変形性股関節症の類似疾患
○急速破壊型変形性股関節
変形性股関節症は、長い期間かかって進行するのですが、
約半年から1年で股関節の破壊が進行してしまう疾患です。
変形性股関節症は、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などの基礎疾患やぺルテス病、
外傷性股関節脱臼などの疾患に起因する 二次性の股関節症ですなのですが、
急速破壊型変形性股関節症は、
その名称のとおり、急速に正常関節から発症されるとされており、高齢者に多い。
非常に強い疼痛を呈しますが、関節の可動域は比較的保たれるとされています。
原因は、残念ですが不明とされています。
したがって日本人多く発症する一般的な二次性の変形性股関節症ではなく、
欧米型の一次性変形性股関節症の一種とも言われており、変形性関節症の
約5〜10%とされており、非常に少ない疾患です。
<注意点>
明らかな外傷の覚えもなく、(高齢者は転倒による大腿骨頚部骨折は非常に多い)
先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全の基礎疾患の既往症もな股関節の痛みを知らなかった
高齢者が急に股関節周囲の痛みを覚え、歩行も辛くなった場合は、整形外科でのレントゲン
を必ず撮影してください。
しかも1回目が異常なくても、痛みが数か月つづくくならば、もう一度撮影してください。
この時に発見される場合も多い。
初期のレントゲン撮影では、異常なくても数か月で急速に変形が進行してしまうのです。
<治療法>
基本的には変形性股関節症と変わりません。
ただし、疾患がわかった状況でも変形は非常に進行しており、その後短期間で進行し、
疼痛も強いために、現状では保存療法は非常に厳しい状況です。
必ずではありませんが、年齢などを考慮して発症して1年前後で
人工関節置換術に移行する場合が多いようです。
○特発性大腿骨頭壊死(特定難病指定疾患です。)
大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭(大腿骨頭靭帯からの)血流が何らかの原因で絶たれ、
骨の細胞自体が死んでしまいます。
その結果、大腿骨頭の一部や大部分が壊死してしまう病気なのです。
ただし細菌感染ではありませんので、腐った状態ではありません。
したがってあくまで血液不順により栄養不良に陥った部位が壊死するのみです。
細菌感染のようにやみくもに広がりません。
大腿骨頭壊死の原因は?
本当の原因はわかりません。・・・・・・が以下の人に多く発症しています。
大きく分けると
1、ステロイドの副作用
これが最も大きな原因とされています。
大量に用いられた場合に発症し易くなります。
約半数を占めるといわれています。
2、アルコール
全体の四分の一を占めるといわれています
男性に発症する場の多くはアルコールが原因と言われています。
3、不明
残りの四分の一は全く不明。
1、のステロイドの副作用にしろ2、のアルコールの場合においても発症の起因であっても、
どうして大腿骨頭への血流が滞るのか?
はっきりとした原因、つまり因果関係の説明には至っておりません。
<症状>
自覚症状の初期の痛みは安静によって比較的沈静します。・・・・・・が
股関節に強い痛みを感じた時点で多くは壊死がかなり進行している場合が多い。
厄介なことに大腿骨頭の壊死が進行し圧潰した時点で気づく場合が多い。
壊死の大きさと壊死の場所によって進行の程度は非常に多様です。
<治療法>
基本的には変形性股関節症と変わりません。
最も違う点は、もともと血液循環の悪いところだけが壊死します。
したがって、その周囲の比較的血液循環のよい部分は時間が経過してもそのままです。
ほとんどの場合、大きさに変化はありません。
逆に、範囲が小さい場合はカルシウムが沈着され修復されて(軟骨修復ではありません)
時間の経過とともに縮小することがあります。
反対に、血液循環が悪い部位の壊死が大きく、荷重のかかる部位であれば、
進行が早く、骨頭の多くの部位の圧潰が危惧されます。
このような時には手術ですが、ほぼ人工骨頭置換術に踏みるようです。
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変形性股関節症と似て非なる疾患
多くの疾患がありますが今回は2種類を紹介します。
○グロインペイン症候群(鼠径周辺部痛症候群)
聞き慣れない疾患名ですね。
症候群となっています。○○症候群は最近非常に多いですね。
疾患が多様化しているのか? 原因が不明確なのか?
様々な症状が出現するのですですね。
股関節を含めた、骨盤、恥骨・恥骨など、特に鼠径部における障害あるいは病変の
総称としてつかわれています。
○恥骨結合炎・・・左右の恥骨を結合する軟骨円板の運動ストレスによる炎症。
グロインペイン症候群の中でも代表的かつ深刻な障害
○内転筋腱障害
○鼠径管後壁欠損
○外腹斜筋腱膜損傷
などの障害を総称した疾患名です。
<発生の要因>
スポーツによるオーバーユース
サッカー、ラクビー、バスケットボール、中距離・長距離の陸上競技
ホッケー、ウエイトリフティングなどの選手に発生することが多い。
サッカーの中田英寿やジダン選手が発病され有名になった疾患です。
ランニングによる荷重負荷
急激な捻転や方向転換
キック動作(インサイドキック)
<好発する年齢>
骨や筋肉の発達が整っていない10代から選手としてのピークである30代までの
広範囲の年齢に見られる。
近年は、さまざまなスポーツ熱が盛んになるにつれ、60代までのスポーツ愛好者が、
鼠径部を含めた、股関節周囲の痛みを訴えた場合に、この疾患の診断を受ける場合が
多いようです。
<症状>
初期は運動後のこわばりや硬さを感じる程度。
痛みは、恥骨結合周辺や内転勤や腸腰筋の付着部、腹筋下部などの疼痛の鼠径部だが、
鼠径部や大腿内側に限らず、腰、膝関節なども痛む。
悪化すると運動時の痛み、股関節の可動域制限。
<原因>
内転筋群の過緊張
腹筋の過緊張(腹斜筋・腹横筋・腹直筋)
腸腰筋の過緊張
腰椎、仙腸関節の機能低下、安定化の低下
<治療>
骨盤周囲筋腱の緊張、拘縮の改善
骨盤、仙腸関節の可動性の正常化
非常に重要ですが、意外と治療では置き去りにされています。
ハムストリングスの緊張
股関節外旋筋の緊張
コアな筋の機能低下による代償筋である広背筋、殿筋、股関節内転筋などの緊張
などが主に可動性を制限していますので改善するべきです。
神経支配域の正常化
結局は、変形性股関節症の治療に準じることになります。
スポーツによるオーバユースが多いのでその症状によって目的は変化します。
一つの例
サッカーに多いのは股関節内転筋依存型のインサイドキックというキック動作です。
腹筋群とともに恥骨結合に付着する内転筋の過緊張を緩めるのは当たり前ですが
正しいインサイドキックつまり、初心者は股関節内転筋に依存する動作の矯正。
「インステップキックと同様に脚を振り、インパクト前につま先を外に向けて面を作る」
治療以外にこのような指導が必要です。
スポーツ現場の指導者の助言も治療に必要不可欠ですね。
○異常感覚性大腿神経痛
大腿神経が骨盤内で枝分かれし、大腿外側大腿皮神経が大腿外側の感覚をつかさどります。
この神経が鼠径部の靭帯の下を通過するところで圧迫されてひきおこされる症状。
絞扼性ニューロパチー(entrapmennt neuropathny )の一つです。
<原因>
大腿神経(L1〜L4):腰神経叢で最も大きい神経です。
筋枝は腸腰筋や恥骨筋、縫工筋、大腿四頭筋や膝関節筋を支配しています。
皮枝はおもに大腿前面の皮膚に分布しています。
大腿外側皮神経(L2〜L3)
大腿外側面の皮膚に分布しています。
この神経は知覚が主で大腿の外側部の上半分ほどを支配しています。
末梢神経がその経路の途中で特定の部分で、周囲組織によって圧迫、絞扼された状態
になって局所傷害をおこし、その結果神経症状を起こします。
<症状>
絞扼性ニューロパチー(entrapmennt neuropathny )の特長として、
痛みとシビレなどの知覚障害が主で筋力の低下や運動障害は軽微でまれです。
末梢神経の障害の症候群です。
神経支配領域での痛みやシビレあるいは感覚鈍磨などが主体になります
長時間立っていたり、長く歩くことでしびれや痛みが増強します。
腸骨の前上棘突起の直下に圧痛点を認める。
<発症の原因要素>
極度の肥満、妊娠あるいは糖尿など車のシートベルトなでが原因でおこる場合があります。
<治療>
支配神経領域を考慮し神経根、筋など治療する。
治療の期間は神経鞘の損傷の程度で決定されます。
したがって、治療期間は様々ですが長期間必要だと思ってください。
末梢神経の疾患ですのでキチンと治療すれば、必ず回復します。
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変形性股関節症の基礎疾患
原因が分かっている変形性股関節症を二次性変形性股関節症あるいは
続発性変形性股関節といいます。
日本においては、この二次性の変形性股関節症が80%を占めるといわれています。
しかも、
その90%以上が先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全によるものです。
この2種類はある意味では先天性の疾患とも呼べますすね。
もう一度変形性股関節症の原因は?をお読みください。
その他の基礎疾患として、
外傷性の疾患に、股関節脱臼、股関節脱臼骨折、大腿骨頚部骨折など、
小児期に発症する、ペルテス病、大腿骨頭すべり症など
免疫性疾患として、リウマチなどがあります。
これらはすべて二次性の変形性股関節症をひきおこす基礎疾患になります。
今回はペルテス病と大腿骨頭スベリ症を簡単に紹介します。
○ペルテス病
ペルテス病とは生後18ヶ月(1歳半)より骨成熟(大腿骨頭の成長が終了する)までの間に
発症した、大腿骨頭の血行障害により生じ、同部が壊死する病気をいいます。
特に6歳前後の元気な小児に発生し易いといわれています。
<原因>
ペルテス病には主に明確なきっかけ無しで生じるところが一つの特徴です。
主な原因は以下の通りですが、本当の原因はわかっておりません。
1、外傷説として繰り返し生じる小さな外傷がまだ脆弱な骨頭に影響する。
2、阻血し易い構造のため。
子供の大腿骨頭は成長軟骨であり骨髄から分離した形態をしており、骨髄からの
血行路がありません。
そのために通常は3本の血管から栄養されているのですが、6〜7歳の男児の
血行路が1本しかない場合が多いためにそ阻血し易い。
3、単純性関節炎による関節液が多く貯留し、関節内圧が高まることで阻血する。
繰り返しひきおこされる股関節の関節内圧の上昇。
4、血液が固まりやすい体質
血液凝固因子の働きすぎあるいはッ血液溶解因子の不足
5、未熟児や骨年齢の遅延している場合など
<症状>
股関節から膝にかけての痛みと跛行をきたす。
骨頭の圧痛、外転、内旋、開排運動の制限。
大腿の軽い筋委縮
しかし、実際の臨床では、股関節の痛みを訴える場合は少なく
多くの場合は、大腿部や膝の痛みを訴えます。
注意点!!
この事実が、この疾患の発見を遅らす大きな原因です。
つまり、膝関節・大腿骨の疾患あるい腰(同じ神経支配のため)の疾患を疑い、
股関節の疾患を見逃す傾向にあるのです。
診断が遅れれば、進行が進み大腿骨頭の変形が修復せず変形が残存してしまい、
40代の早期に変形性股関節症に陥り人工骨頭の置換術の実施となるようです。
小児整形の重要性をひしひしと感じます。
<治療>
保存療法:変形性股関節症に準ずる。
装具療法:様々な装具があります。
数年の装具着用が必要です。小児にとって非常にストレスがかかります。
手術:様々な方法があります。
装具療法も手術療法も要は大腿骨頭を寛骨臼内に深くおさめることが重要です。
<経過>
壊死そのものは,多くが数年をかけて自然に再生し治癒する良性疾患といわれています。
これが、骨端炎(無腐性骨端壊死)とよばれ放置しても自然に治り、多少の運動障害と
骨の変形を残す。・・・・・・・・と成長痛を引き起こす骨端炎として軽視されがちであった。
しかし実際は、
発症する時期および治療時期によって経過はかなり変化するのが実情です。
○5歳未満の発症。
経過良好で正常な大腿骨頭になる場合が多い。
しかし、場合によっては変形が明確であったりする場合もあります。
注意して十分な観察が必要です
○5〜8歳の発症
5歳以上の場合は、大腿骨頭の壊死の程度によります。
壊死による損傷が少なければ装具療法により経過観察。
実際は、保存・装具療法適応の軽微な人は少なく手術適応が多い。
○9歳以上で発症
骨修復までの期間が短いために、非常に修復の可能性は低くなってきます。
つまり、装具療法や保存療法の効果は著しく低下してしまいます。
手術療法により、将来の変形性股関節の予防につながるとされています。
○11歳以上
成人の大腿骨頭壊死と同様。
以上を踏まえてペルテス病に重要なことは
早期発見、早期治療、大腿骨頭を寛骨臼内に深くおさめること、可動域改善が重要。
元気な小児が多く発症しますので、長期による装具療法による小児のストレス、
継続的な観察を含め可動域改善の治療などなど、患者本人のみならず、
ご家族、医師を含めた治療者の協力と覚悟が必要な疾患です。
○大腿骨頭スベリ症
6〜7歳の男児に多く発症。
思春期に大腿骨近位骨端部が頚部に対して後下方に滑る疾患
肥満の男児に多くホルモンの関与が考えられている。
外傷を契機とした急性型(5〜10%)と徐々に発生する慢性型があります。
<症状>
疼痛
股関節痛
慢性化では跛行、股関節痛および膝関節の痛み、下肢の痛みが主訴になる、。
可動域
著しい外旋位を呈する
屈曲、外転、内旋の制限
Drehhmann徴候:仰臥位で股関節を屈曲していくと開排(外転、外旋)
<経過>
発育期に大腿骨近位骨端部の阻血性壊死をきたす疾患でありますが、
スベリが軽度で大腿骨頭壊死などの合併症が起こらないと、予後良であり壊死は
最終的には修復されるとされています。
しかし、
高度のスベリであれば、適切な治療を行っても続発する大腿骨頭の陥没変形、
骨端成長板の成長障害による頚部短縮および横径増大の変形が生じる。
栄養血管の閉鎖機序は不明です。
<治療>
股関節の固定術(手術によるスクリュウー固定等、その後ギプス固定など)
保存療法は変形性症股関節に準じる。
ペルテス病と同様で
早期発見、早期治療、大腿骨頭を寛骨臼内に深くおさめること、可動域改善が重要。
いかがでしょう。
先天性あるいは小児期の疾患がいかに変形性股関節症の原因疾患ななるのか
おわかりになったでしょう。
乳幼児のおんぶの仕方、オムツの仕方から、ハイハイ時期
小児期による疾患に注意することが、
変形性股関節症の予防につながることが理解できます。
産婦人科、小児科、整形外科とくに小児整形の三位一体の連携が重要です。
長かった変形性股関節症を中心とした、股関節については今回で終了します。
最後に
今の変形性股関節症の本来の治療は小児整形が重要であると痛感します。
乳幼児の先天性股関節などの小児検診、助産婦などのによるお母さんの指導など
最近は充実してきましたが、整形特に、小児整形の充実には程遠いように思われます。
現在の変形性股関節症の80%が二次性の変形性股関節症と分かっているのに、
小児整形が充実していないのは全く不思議です。
一般の整形外科は世間では益々増加の一方です。
手術においても人工股関節、人工膝関節を実施する機関も増える一方です。
一方、需要の多い小児整形は一向に増加しません。
まして小児の股関節を含めた手術機関は一向に増える様子はありません。
早期発見、早期治療が50年後における変形性股関節症の予防のためも必要です。
もっともっと充実してほしいものです。
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